概要
税法全般において幅広く研究を続けてきた著者の集大成として、40年の間に執筆してきた税法に関わる論文を中心に編纂し、5巻に整理まとめた著作集。
税法に関する基礎理論にはじまり、憲法の定める租税法律主義における税法の解釈・適用はどうあるべきかなどの根源的な問題への考証、所得税・法人税・相続税・消費税といった国税のほか、地方税(住民税・事業税・固定資産税・地方消費税など)についても言及し、税目ごとの論点の検討を収録。
また、租税手続法をめぐる問題点や紛争例にも触れ、申告納税制度とこれを基礎とした納税義務の確定手続、課税処分や租税争訟のあり方までを論じています。
目次
Ⅰ 納税義務者と課税対象
1 親族が事業から受ける対価
2 損害賠償金等の非課税所得該当性
3 違法支出の必要経費該当性
4 債務免除益に係る所得税法上の取扱い
Ⅱ 不動産所得
5 不動産所得の意義とその年度帰属
Ⅲ 事業所得
6 事業所得該当性をめぐる紛争例
7 事業所得の人的帰属
8 事業所得における収入金額の年度帰属
Ⅳ 給与所得
9 給与所得者の経済的利益に対する課税
10 給与所得概念における従属的労務性
Ⅴ 譲渡所得等
11 譲渡所得課税における取得費
12 資産の取得価額をめぐる近時の紛争例
13 譲渡所得課税における資産の譲渡費用
14 資産の譲渡と措置法上の特別控除の適用
15 土地の譲渡と租税特別措置法の適用をめぐる問題
16 一時所得と他の所得との区分
17 生命保険金の受給をめぐる紛争例
Ⅵ 収入金額
18 過年度分の遡及的支給と年度帰属
Ⅶ 必要経費
19 損害賠償金の必要経費該当性
20 家事関連費の必要経費該当性
21 必要経費判定における債務の確定の意義
22 不動産の取得に係る租税公課の必要経費該当性
Ⅷ 所得控除
23 扶養控除等の法的性格とその適用の可否
Ⅸ 同族会社の行為計算否認
24 同族会社の行為計算否認規定(所得税法157条)の射程
Ⅹ 源泉徴収
25 給与所得者に対する源泉徴収とその過不足税額の是正
26 源泉徴収をめぐる近時の紛争例
―その性格と手続について
Ⅺ 過誤納金等
27 過誤納金の還付をめぐる問題
28 還付請求権等に係る相続税と所得税との課税関係
Ⅻ 租税争訟
29 課税処分に係る理由の差替えの可否
著者紹介
田中 治(たなか おさむ)
1952年3月 愛媛県に生まれる
1975年3月 京都大学法学部卒業
1977年3月 京都大学大学院法学研究科修士課程修了(法学修士)
1980年3月 京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得退学
1980年4月 京都大学助手
1981年4月 大阪府立大学経済学部専任講師
1985年10月 大阪府立大学経済学部助教授
1992年11月 大阪府立大学経済学部教授
1999年3月 京都大学より京都大学博士(法学)を取得
2005年4月 大阪府立大学経済学部長・経済学研究科長
2008年3月 同志社大学法学部教授(現在に至る)
社会的な活動として,大阪府労働委員会公益委員(1996年から2004年まで)・同委員会会長(2000年から2004年まで),公認会計士試験委員(租税法)(2006年から2008年まで,2009年から2015年まで),日本学術会議連携会員(2006年より2015年まで)等を歴任。各種地方団体(大阪府,滋賀県,京都市,福岡市など)において,新税創設のための検討委員・委員長等を務める。
学会活動として,日本税法学会理事長(2007年より2019年まで),租税法学会理事(1990年より現在まで),日本租税理論学会理事(1991年より現在まで),日本財政法学会理事(1992年より現在まで)を務める。
ほかに,日本税理士会連合会外部理事,公益財団法人 日本税務研究センター理事・研究員などを歴任。