概要
「税法学」創刊号から200号までの巻頭言を収録。
(昭和42年10月に刊行されたものを復刊)
税法に携わる研究者 待望の復刊!
戦後間もない日本の税制の動きを知る貴重な一冊。
『税法学巻頭言集』は、昭和26年、故中川一郎先生が創刊した月刊誌『税法学』に、自らが「巻頭言」として執筆・連載した記事(昭和26年~42年までの計200回)を1冊の本にまとめたものです。昭和42年に初版が出版された後、永らく絶版となっていましたが、多くの税法研究者からの復刊リクエストにお応えし、この度、清文社より刊行いたしました。
『税法学』は、ドイツ税法学・スイス税法学を模範として、日本で初めて法学者の立場から「税法」を研究することを目的に設立された「日本税法学会」の学会誌として現在も年2回発行されています。
本書は、戦後間もない日本の税制の動きと、当時は未だ確立されていなかった「法律学としての税法研究」を知る上での大変貴重な資料であり、税法学の確立に生涯を捧げた著者の熱い思いがひしひしと伝わってきます。
内容の一部抜粋
税法概念と税法原則の確立〔昭和27年11月 第23号〕
わが国において従来提唱されている税法原則は殆んど会計原則である。真の税法原則の重要なものとして私は「信義誠実の原則」を把握する。それはドイツにおいてはすでに1930年代に確立されているのであるが、わが国においては未だに紹介さえもなされていない。この原則がいかに税法の適用解釈に影響を与えるか、ここに私は税法学の差し当つての大きな使命を見出し得ると考える。
税法の条文の解説ではなく、かかる税法概念と税法原則の確立とによつて、税法学の輪郭と内容とは次第に鮮明になつてくるであろう。
税法は課税の単なる一基準ではない〔昭和28年11月 第35号〕
明治以来最近までに税法に対しては、法律学的に全く無批判的であつた。国民大衆はただ、税額の低からんことを願い、税務当局は、国家予算で決定した租税収入の確保のみを念願としたのである。しかも常に後者が権力的の故に優先し、従前のわが国においては、それが批判をなすことを許されず、また実際上なすことも無駄であつた。それは新憲法のもとにおいてこそ初めて批判研究を必要とするに至つたのである。今や税法は誰のものでもなく、国民大衆のものなのである。
著者紹介
明治42年 岐阜県に生まれる
大正14年 旧京都第一中学校四学年修了
昭和3年 旧第三高等学校文科乙類(独法)卒業
昭和6年 旧東北帝国大学法文学部法律学科(独法)卒業後、同学部副手
昭和7年 旧京都帝国大学法学部大学院に入学
昭和12年 旧名古屋高等商業学校教授
昭和25年 名城大学法商学部教授
昭和26年 月刊誌「税法学」を創刊、日本税法学会を設立
昭和37年 法学博士(京都大学)
昭和42年 福岡大学法学部教授
昭和44年 日本税法学会専務理事(代表者)に就任
昭和47年 福岡大学を退職、弁護士登録
平成7年 逝去