概要
広大地・借地権・小規模宅地特例を中心に、制度の趣旨と変遷を踏まえて実務上の判断指標を考察。評価実務で直面する間違えやすい論点への対応策についても豊富に掲載。
目次
第1章 課税対象財産としての土地建物等のインパクトの大きさとその厄介さ
Ⅰ 相続財産に占める土地建物等の課税価格算入額のシェアは約4割
Ⅱ 相続税法22条による時価概念を正確に反映するための周辺知識と事前調査
Ⅲ 財産評価基本通達に基づく評価額によらず、不動産鑑定評価額を採用すべきケース
Ⅳ 評価額・課税価格算入額と物納申請における収納価額との利害対立の構図
Ⅴ 最も影響が大きいファクターは旧広大地・借地権帰属・小規模宅地等の特例
Ⅵ 課税上のインパクトの大きさが与えた実務の現場への影響例(更正請求等)
第2章 広大地評価に関する改正の歴史
~大幅な減額規定ならではの功罪~
Ⅰ 広大地の評価方法が繰り返し変遷を遂げて来た理由とその背景にあるもの
Ⅱ 昭和55年東京国税局長通達による極めてシンプルな広大地の考え方
Ⅲ 平成6年創設の有効宅地化率を奥行価格補正率に代替させる旧広大地制度
Ⅳ 平成16年に改正された下限付きの地積連動算式を用いた旧広大地制度
Ⅴ 平成29年改正で登場した規模格差補正率を採用した地積規模の大きな宅地
第3章 借地権の帰属を巡る論点
~5つの基本パターンとその判断指標~
Ⅰ 借地権の帰属の有無の判断が相続税の課税内容と評価額を大きく左右する
Ⅱ 類型A:路線価等に記載された借地権割合をベースとするもの
Ⅲ 類型B:相当地代通達2の算式割合(最低20%)をベースとするもの
Ⅳ 類型C:貸宅地を80%、借地権を擬制割合の20%とするもの
Ⅴ 類型C’:貸宅地を80%、借地権をゼロとするもの
Ⅵ 類型D:貸宅地を自用地として評価し、借地権をゼロとするもの
第4章 小規模宅地等の特例を巡る論点
~分割要件・適用可否・事後適用~
Ⅰ 小規模宅地の特例が課税価格算入額にもたらす影響額の大きさ
Ⅱ 遺産分割要件と未分割事案についての本特例の事後適用に関する実務
Ⅲ 特定居住用宅地等に該当するか否かの要件とその実務上のポイント
Ⅳ 特定事業用宅地等に該当するか否かの要件とその実務上のポイント
Ⅴ 特定同族会社事業用宅地等に該当するか否かの要件とその実務上のポイント
Ⅵ 貸付事業用宅地等に該当するか否かの要件とその実務上のポイント
Ⅶ 特例の事後適用全般に関する実務(期限後申告・修正申告・更正の請求・嘆願)
第5章 土地建物等の評価上、必ず押さえておきたい論点・間違えやすい論点
Ⅰ 土地篇
Ⅱ 建物篇
著者紹介
田川 嘉朗(たがわ・よしろう)
南青山資産税研究所 所長・税理士
■1961年東京生まれ。1983年から1989年まで、美術・書道関係の出版社に勤務し、美術雑誌の編集長などを歴任。
■1990年から2020年まで、資産税専門の準大手税理士法人に勤務し、代表社員・統括パートナーとして、数多くの相続税・贈与税・譲渡所得の申告業務、対策業務等に関与。租税特別措置法第40条・第70条の非課税特例を適用した約1ヘクタールの林地の自然保護団体への寄付事案、私道の評価割合を当時の60%から現行の30%に引き下げる要因となった不服申立事案などを担当した。
■論考では、『月刊税理』(ぎょうせい)の1999年7月号に「無償返還届出貸宅地をめぐる現行評価実務の矛盾点」を、2006年10月号に「広大地新通達が引き起こす相続事案の問題点~広大地評価の光と影」を各々寄稿。2018年にはWEBマガジン『プロフェッションジャーナル』創刊5周年記念連載「AIで士業は変わるか?」へ寄稿した。
■2021年、南青山資産税研究所を開設、本書と同一のコンセプトにて執筆した「非上場株式 評価の論点」(清文社)を刊行。東京税理士会・麻布支部所属。