主要税制改正詳解 試し読み
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267財務省解説 相続税及び贈与税の納税義務については、平成12年度税制改正において経済のグローバル化等といった経済社会状況の変化への対応、課税の公平確保・租税回避行為の防止等の観点から上記1⑴②の者について、従来は相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産で日本国内にあるものが相続税又は贈与税の課税対象とされていたところ、日本国外にある財産についても相続税又は贈与税の課税対象とすることとされました。この改正により日本国外の居住者についても一定の範囲で国外に所在する財産の取得に対する課税が行われるようになりましたが、近年では、例えば、海外で生まれた孫等で、日本国籍を取得しなかった者に国外に所在する財産の贈与等をすることによって、贈与税の課税を回避するなどこの平成12年度税制改正後の制度によっても対応できない租税回避行為も見受けられるようになってきました。そこで、平成25年度税制改正においては、こうした租税回避に対応するため、日本国籍を有しない国外居住者についても一定の範囲で相続若しくは遺贈又は贈与により取得した国外財産について相続税又は贈与税の課税対象とすることとされました。 (参考) アメリカ、イギリス、ドイツ、フランスにおいては、被相続人又は贈与者が国内居住者であれば、相続人若しくは受遺者又は受贈者が国外居住で外国籍の者であっても、相続若しくは遺贈又は贈与により取得した国外財産について相続税又は贈与税を課税することとされています。 納税義務者を巡る税務判決では、これまでにも日本国内の親から海外に居住する外国籍の子に対して行われた外国為替による送金が国内財産の贈与であるか否かを巡って争われた裁判例(東京高判平成14.9.18・TAINSコードZ252―9193、東京地判平成14.4.18・Z252―9110)、外国法人の出資を贈与により取得した時において、日本国内に相続税法上の住所を有し、贈与税の納税義務を負うか否かが争われたいわゆる武富士事件(最判平成22.11.12・Z260―11552、東京高判平成21.1.23・Z258―10868、東京
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