あたるとして契約を解除できるかを考えてみましょう。たしかに、契約書に厳密に従えば、契約違反であることは間違いないのですが、たかだか1日の遅れを、それもやむを得ない事情があるにもかかわらず、契約解除を主張することは、信義則により排除されます。信義則は、契約条項の杓子定規な適用を、いくらなんでもやり過ぎだ、と排除することであり、いわば、法律の冷酷な適用を避け、血の通った運用をめざすための原則といえます。に関する事柄の全体をカバーできません。なぜなら、起こり得るすべての事柄を取り決めることは、実際には困難だからです。かりにそれができたとしても、契約書はとても大部なものになり、重要な事柄が埋没して、かえってわかりづらいものになってしまいます。ですから、契約書には、最低限これだけは必要という重要な事柄だけを記載し、それ以外の事柄は、法律の規定に従って対応するという、二段構えの構造とします。法規定のカスタマイズ法律の規定(任意規定)は、標準的あるいは最大公約数的なものであり、すべてのケースに妥当するとは限りません。契約当事者は、必ずしも法律の規定に従う必要はなく、自分たちの事情に即して自由な合意ができます。この場合、当事者で合意した内容を契約書に記載することにより、法律の規定を排除することを明確にします。コンピュータ・ソフトにたとえれば、任意規定は、初期設定にあたります。初期設定は標準的あるいは最大公約数的なものであり、それでよいと思えば、9第1節不動産契約へのはじめの一歩1-5契約書は万能か契約書は最低限の取り決め不動産の売買や賃貸借の際に契約書をつくりますが、契約書だけでは、売買や賃貸借
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