当事者の合意により任意規定を変更できることは、裏を返せば、当事者が特に取り決めなかった事項については、法律の規定(任意規定)が適用されることを意味します。つまり、任意規定がカバーする事項について、それとは別の当事者の合意があれば、それが任意規定に優先し、合意がなければ、その欠落を補充するために任意規定を適用します。つまり、任意規定は相対的なもの、強行規定は絶対的なものといえます。よくある誤解法律に関してよくある誤解は、任意規定の条文を絶対的なものと思い込むことです。筆者は、民法を引き合いに出して、「法律でこう決まっているのだから、仕方ありません」という言葉を、何回か聞いたことがあります。中には、わざわざ六法全書の条文を示しながら、「私は法律を知っているので、間違いありません」と得意気に話す人間もいました。しかし、彼が示した条文は任意規定であり、当事者の合意が優先すべきものでした。民法およびその関連法には、強行規定も存在しますが、多くは任意規定です。基本的に法律は絶対的なものではなく、当事者の合意によって変更可能です。いわば、法律のために人間があるのではなく、人間のために法律があるということです。律行為の対象となる事柄にはそれぞれ特殊性があり、不動産に関する契約では、不動産の特殊性に対応して、民法の一般規定を修正する必要があります。このように各分野の特殊性に対応して一般規定を修正する法律を、一般法に対して特別法といいます。民法と借地借家法は、一般法と特別法の関係にあります。民法が一般的な規第1章契約に関する基本事項61-3特別法とは一般法と特別法民法は、私人(個人・会社)間における法律行為全般を規定する法律で、一般法といわれます。しかし、法
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