Q1-4A不動産売買では、まず売り手から情報が提供され、買い手がその情報を検討して売買が行われる、というのが通常ですが、商品としての不動産には、他の商品の情報のあり方とは大きく異なる点があります。4第1章不動産調査の基本的事項住宅の価格が上がったとしても、すぐに「自宅を売ろう」と考える人は多くはないでしょう。住むところがなくなると困りますから。住宅の所有者である売り手は、土地の価格が上昇したからといって、すぐに自宅を売却しようとするわけではなく、多くは世帯構成の変化や家族の事情による住み替えのほか、資金繰り・破産・納税等なんらかの特別な理由による換金の必要性があってはじめて、市場に現れます。つまり、不動産の供給は他の商品と異なり、不動産価格の変動に対して硬直的です。さらには、土地は同じ場所に重なって存在できないため、不動産はその所在する場所ごとに個別性を持ち、まったく同じ不動産はふたつと存在しません。この特徴は不動産の価格形成に大きな影響を与えます。「不動産供給の硬直性」、そして「まったく同じものが存在しない」という特性があるために、不動産の価格はなかなか一般の商品のようなわかりやすいかたちで決まりません。しかし、不完全でありながらも、不動産には売りたい人と買いたい人の集まり、つまり取引市場があり、それに参加する人たちによって不動産は取引されます。不動産の価格は地域や種類によってかなり異なりますが、取引に参加する人が違えば、取引のあり方も変わるのは当然です。たとえば、銀座の商業地と郊外の住宅地では売買する人の属性がまったく違います。また、不動産を自宅などみずから利用する目的で取引する場合と、不動産投資のために取引する場合とでは、重視される要素や価格の決まり方が異なってきます。まず、よく言われるのは、商品としての不動産には「情報の非対称性」が存在するということです。これは、売り手と買い手の間で保有する情報の量や内不動産情報にはどのような特徴があるか
元のページ ../index.html#26