9訂版 会社法決算書 作成の手引
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株式会社の経営者は、株主総会において選任され、経営の委託を受けて経営活動を遂行し、その経営活動の結果を株主総会で報告して、その承認を得ることにより、初めてその経営責任を解除される。この報告義務の履行と経営責任の解除の一連の手続が計算書類等の作成と株主総会の承認であり、計算書類の作成は、株式会社の取締役にとって最も基本的な職務のひとつである。会社法は、第435条第2項において、株式会社は法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない、としている。これを受けた会社法施行規則は第116条において、計算書類に関する具体的事項は、会社計算規則において規定されるとしている。会社計算規則は、計算書類の記載事項等を定めているものの、会社によって記載すべき事項はさまざまであることから、その具体的記載方法も規則の条文の趣旨をしっかりと理解した上で適宜に工夫することが必要となるが、時として条文の解釈やその適用場面で迷いが生じる場合も多い。計算書類の作成に携わる実務担当者の方々にとっては、その検討結果が取締役の作成責任にかかわることでもあり、精神的な負担はかなりのものであることは想像に難くない。このような場合、担当者の方々にとって必要なものは、法律的又は会計的な判断を迫られる項目や記載内容について、よりわかりやすい解説とさまざまなケースを想定した記載例であると思われる。本書はそのような読者のみならず、経理実務に初めて携わる担当者においても、実際の実務の指南書となるように、法定スケジュールに加え、決算実務のスケジュール、作業分担や作成資料などの一覧表例、また実際の開示事例等を多く織り込み、より幅広い読者の期待に沿えるものとしている。本書の執筆にあたっては、日頃、監査の現場で数多くの計算書類等の監査に従事している経験豊富な公認会計士等を執筆者として選んでいる。基本的な執筆方針は次のとおりである。■会社法に基づいた決算の概要を、実務スケジュール等も織り込んで解説した。■計算書類の作成にあたり、会計処理や表示上において実務上留意すべき事項を「ワンポイント・アドバイス」として詳述した。この「ワンポイント・アドバイス」は現場で経験を積んだ公認会計士等が日頃から留意している事項を取りまとめたものである。■開示事例についてはさまざまなケースに対応できるよう、各開示項目に極力多くの開はじめに

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