A実名報道の現状●17歳以下 →少年法で実名報道されない●18歳~19歳 →少年法上「特定少年」となり、家裁から逆送致されて起訴されれば実名報道されてしまう第8章 刑事事件に関する法律知識少年法と実名報道成年年齢の引下げと少年法実名報道を回避できるか171殺人事件などの重大犯罪では、成人の犯人の氏名が報道されているのをよく見かけます。また、少年法では実名報道はされないとも聞きました。では、成年年齢が18歳に引き下げられましたが、18歳から実名報道されることになるのでしょうか。 成人の場合、殺人や強盗といった法定刑の重い犯罪や、給付金詐欺など社会的に注目を集めている事件、さらには、社会的地位の高い人物が犯した犯罪などでは、逮捕・起訴などのタイミングで被疑者・被告人の実名がマスメディアによって報道されています。 そして、SNS等が広く普及している現在では、上記のような報道が行われると、ネット上では、その被疑者・被告人の出身地や実家、学校、家族親戚の有無に至るまでさまざまな情報が拡散されてしまいます。その影響は被疑者・被告人だけでなく家族・親戚にも及ぶため、実名報道による影響は非常に大きなものとなっています。 少年法は、少年は、成人と比べて判断能力が乏しく、まだ更生の可能性も大きいことから、少年の起こした刑事事件について、成人とは異なる対応・措置を定めています。その一環として、上記のような実名報道のリスクから少年を保護し、少年の更生を図るため、少年法が適用される20歳未満の者については、基本的に実名報道は行わないこととされてきました。 令和4年4月1日より民法上の成年年齢(成人年齢)が20歳から18歳に引き下げられ、これに合わせて少年法も改正されましたが、少年法上はいまだ20歳に満たない者が「少年」とされています。ただし、上記民法改正の趣旨も考慮されており、新たに19歳、18歳の少年を「特定少年」として、17歳以下の少年と取扱いに差を設けました。 この特定少年については、少年法の規定も一部適用されますが、家庭裁判所から検察官に逆送致されて正式に起訴されれば、成年と同じ扱いを受けることになり、結果としてマスメディアも実名報道ができることになっています。 なお、特定少年の新設とともに、特定少年については、原則、逆送致対象事件も拡大されることになっています。具体的には、16歳以上の少年の時に犯した故意の犯罪行為により被疑者を死亡させた罪の事件に加えて、18歳以上の少年の時に犯した死刑、無期または短期(法定刑の下限)1年以上の懲役・禁錮(令和4年6月13日に成立した刑法改正により、刑務作業のある懲役刑と刑務作業のない禁錮刑は、今後、拘禁刑で統一されることになっています)にあたる事件が逆送致の対象となります。そして、逆送致後の刑事裁判でも、特定少年は、17歳以下の少年とは異なり、20歳以上の者と同様の刑罰が科されます。 特定少年については、逆送致されて起訴された場合、実名報道される可能性はかなり高いといえます。最終的に実名報道するかどうかは各メディアの判断になってしまいますが、こういった場合も、やはり弁護士に依頼して、報道機関に上申書を出してもらうなど、早い段階からきちんと弁護活動をしてもらうことが必要です。Q8-619歳も実名報道されるの?
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