A内定取消しができる場合134内定者側に生じた事由を理由とする内定取消しが適法なのは……「採用内定当時知ることができずまた知ることが期待できないような事実」を理由として、「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる」場合●面接時の印象が陰鬱だったことを理由とする取消し →認められない可能性が高い●成績不良等による卒業延期、健康状態の著しい悪化、企業秩序を乱し信頼関係を損なうような経歴等の虚偽申告・非行等を理由とする取消し →認められる可能性が高い内定が取り消された場合の対応私は、無事第一志望の企業から内定をもらい、入社前研修にも参加しました。しかし、先日会社から「実は面接時の印象が悪く、不適格と思っていたが、研修中の様子を見ていてもその印象が打ち消されなかった」として、内定を取り消されてしまいました。到底納得できないのですが、このような内定取消しは適法なのでしょうか。 一般的に、内定の時点で労働契約が成立すると考えられていることはQ6-6のとおりですが、より厳密に言うと、誓約書や内定通知に記載された一定の取消事由などが生じた場合に解約できる権利が会社に残された(解約権が留保された)労働契約が成立すると考えられています。 内定者側に生じた事由を理由とする会社による内定取消しは、この留保された解約権の行使による労働契約の解約であり、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効となります。 裁判例によれば、「採用内定当時知ることができずまた知ることが期待できないような事実」を理由として「解約権留保の趣旨、目的に照らして客観的に合理的と認められ社会通念上相当として是認できる」場合に限り、内定取消しが認められるとされています。 そうすると、設例のように、面接時の印象が悪かったというのは採用内定段階で知ることができた事情であることから、それが打ち消されなかったことを理由とする内定取消しは無効である可能性が高いと考えられます。 なお、業績悪化など会社側の都合による採用内定取消しについては、整理解雇(会社の業績の悪化等を理由とする解雇。Q6-25参照)の場合と同様に、①人員削減の必要性、②解雇回避努力義務の履行、③人選の合理性、④手続の相当性という要件を満たす必要があるとされており、簡単に認められるものではありません。 設例のように内定取消しが合理的な理由を欠いている場合は、内定者は、内定取消しの無効を主張して、企業に対し、自身がその会社の従業員であることの確認を求めることができます。 また、内定取消しがなければ得られたであろう利益(賃金相当額)や、違法な内定取消しによって著しい精神的苦痛を被った場合は、その慰謝料について損害賠償請求が認められる可能性があります。 企業側がこれらの主張を認めない場合は、最終的には訴訟や労働審判により解決を求めることになります。Q6-7内定を取り消されてしまったら?
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