●Ⅵ 無形資産評価の実際346究開発等が行われ、その後、売上高・利益が増加する、という内容のことが多い。こうした事業計画をもとに価値評価を行う場合にはPost money valuationとなる。Post money valuationでは、DCF法での計算に、調達した資金をもとに行う設備投資/研究開発費等の支出(キャッシュアウト)が織り込まれている場合には、その調達額(キャッシュイン)も同様にDCF法の計算に反映されているか検討する必要がある。継続価値の計算 – Exitマルチプル法 ベンチャー企業の事業計画では、事業成長途上で計画期間が終わっていることが多い。ベンチャー企業のマネジメントにインタビューすると、計画期間以降も2ケタの成長率を見込んでいる、との説明を受けることも珍しくない。しかし、どのような事業も、成長と共に、その成長率は低減していくことが多く、未来永劫2ケタの成長率を維持することは、ほぼない。 ベンチャー企業は、その投資家のExit機会の創出等を目的としてIPOをすることが多い。株価は、その会社に対する将来の期待値を表象していると考えられているが、上場しているベンチャー企業が今後も飛躍的に成長すると期待されている場合には、それが株価に織り込まれていることになる。この点に着目し、対象会社と類似性の高いベンチャー企業のマルチプルを分析し、これを継続価値の計算で使う方法がExitマルチプル法である。 Exitマルチプル法では、事業計画期間以降の成長見込みを反映したマルチプルを使う必要がある。このため通常のトレーディングマルチプルに加えて、各上場類似会社のIPO時点のマルチプルや取引事例からも分析することが望ましい。割引率 – 成長ステージの考慮 割引率の推計にはいくつかの方法があるが、ここではベンチャーキャピタリストの期待利回り(ハードルレート)をもって、その割引率とする方法について記載したい。米国公認会計士協会(AICPA)が発行しているガイダンス(AICPA Guide – Valuation of Portfolio Company Investments of Venture Capital Funds and Private Equity Funds and Other Investment Companies)(以下、「評価ガイダンス」という)Appendix Bでは、ベンチャー企業の研究開発・事業の状況等に合わせて、以下4種類のステージ(以下、「成長ステージ」という)に区分している。
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