●8 棚卸資産の評価方法 323 次ページの概念図で見てみよう。企業会計上は収益認識について、収益認識に関する会計基準に従って行われる。研究開発段階や製造段階でも事業活動に応じて利益は発生しているが、履行義務の充足時点まで認識はしないというのが基本的な会計ルールである。買収時の棚卸資産のステップアップはこれを前提として、買収後の利益は買収後の事業活動による分のみ認識するべきとの考えによっていると考えられる。 次ページの概念図で言えば、研究開発、企画設計、調達、製造、販売のそれぞれの段階で利益が“発生”しているが、会計ルール上は、原則として販売活動が終了し“履行義務を充足”した段階で認識される。つまり、販売活動の終了とともにア〜オの利益が一挙に認識されるのである。しかし、買収が起こった際にはこのルールはそのままでは適用されない。買収時点で取得した製品については研究開発活動から製造活動までがすでに終了しているため、そうした活動にかかる利益は取得企業によって認識される利益ではない。取得企業によって認識される利益は、(買収後の)販売活動にかかる利益、つまりオのみである、というのが背景にある考え方である。上記の設例で言えば、買収後の営業利益は4で、販売活動に対する合理的な利益相当額として控除された金額と一致している。1007030201030%10%買収後(被取得企業単独)100762420424%4%〈ステップアップによる利益率への影響〉買収前計画(被取得企業単独)売価売上原価売上総利益販売費営業利益
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