M&A 無形資産評価の実務
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は じ め に ディスカウント・キャッシュ・フロー法(DCF法)などの評価手法が貸出金の評価や固定資産の減損会計に導入され、会計と評価の融合が進んでいる。評価といえば、M&A取引において対象会社の買収価格を算定するビジネス目的の企業価値評価が一般的である。一方、評価手法が会計基準へ影響を及ぼしていく動きの中で、財務諸表上の計上金額を決定する会計目的の評価方法も発達を遂げている。会計目的の評価においては、会計基準と評価手法の両者の理解が必要になってくる。 M&Aが日常茶飯事のように実行される一方、知的財産戦略が企業で取り上げられており、さまざまな形で無形資産の価値が注目されようとしている。本書においては、無形資産の会計と価値評価実務に焦点をあて、M&Aにおける会計目的の無形資産の評価実務の説明を行っている。特に米国企業結合会計については、詳細な解説を加えていること、評価手法と会計基準の両者を無形資産の評価の観点から解説しているところに本著の特徴がある。 本書は大きく会計基準に関する解説と無形資産の評価実務に関する解説から構成される。第Ⅰ章では、会計目的の無形資産の評価実務を発達させた米国企業結合会計基準のM&Aにおける意義を考察するとともに、米国会計基準書第141号「企業結合」および第142号「のれんおよびその他の無形資産」を解説している。また2006年より、日本においても企業結合会計が導入されたが、この日本の企業結合会計を米国の会計と比較し、その特徴を説明した。第Ⅱ章では、無形資産の評価業務が会計基準に沿って実際にどのように進められるかを説明している。M&Aの実行時のみならず、M&A後の減損テストについても説明を行っている。第Ⅲ章では、無形資産の評価アプローチを紹介した後、無形資産のタイプ別に評価方法を具体例も織り交ぜながら、説明している。第

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