M&A 無形資産評価の実務
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Ⅴ8●8  棚卸資産の評価方法 321 PPAにおいてはこれまで述べてきた新たな無形資産の識別のみならず、対象企業のBSにオンバランスされている資産・負債も公正価値評価の対象となるが、その中でも棚卸資産のステップアップは属する業界によって重要な影響を及ぼすケースがある。後述のとおり、棚卸資産売却時の利益の一部がステップアップすることになるが、棚卸資産は無形資産や有形固定資産の償却期間に比して一般的に短期で売却されるため、対象期の利益に与える影響が大きくなる傾向にある。以下、この点について説明する。 棚卸資産の公正価値については旧SFAS141のパラグラフ37「C.棚卸資産」で以下のとおり詳細に述べられていたが、ASC805では当該記述が削除されている。現行は買収時に取得した棚卸資産の評価方法に関する詳細な記述が各会計基準上に存在しない状況となっているが、実務的には、下記の評価方法が現在においても採用されている。 ⑴  製品 想定される売価から取得後にかかる被取得企業の⒜売却に要する費用、および⒝販売活動に対する合理的な利益相当額の合計を控除した価額 ⑵  仕掛品 想定される売価から取得後にかかる被取得企業の⒜完成するまでの残りの費用、⒝売却に要する費用、および⒞完成までの残りの製造活動と販売活動に対する合理的な利益相当額の合計を控除した価額棚卸資産の評価方法

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