M&A 無形資産評価の実務
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●Ⅲ  無形資産評価の実務1…採用費2…教育研修費232 M&Aにおける買い手は、対象会社の組織化され、訓練された人的資産を取得することになるため、人的資産を組織化するためのコストを節約することが可能となる。したがって、人的資産の価値は一般的にコストアプローチによって算定される。概念的には、評価基準日時点の対象会社の組織人員を、新たに再構築するとした場合のコストである。つまり、①組織人員の全員を採用し、②現在の組織として機能するまでに教育訓練したとした場合に生ずるコストが人的資産の価値である。 従業員を採用するには一定のコストがかかる。求人広告にかかるコストはその典型例であるが、この他に、マネジメント層や専門性の高い職種の場合には、人材紹介者やヘッドハンターに対して年間給与の一定割合を支払って採用する場合があるため、これらのコスト(あくまでも仮想のコストである)を集計する必要がある。 当該コストは概念的には、例えば部長職として中途採用した者が採用されてから部長として機能し始めるまでのコスト(アイドルコスト)である。 クロージング日現在の在籍人員の賞与や法定福利費等も含めた年間の総人件費を12で除し、1か月分の人件費を算定し、これに、アイドルタイム月数を乗ずることによって、教育研修費が算定される。アイドルタイムとは、業務未経験の人員を配置した場合に現状の人員と同じレベルで業務ができるようになるまでに要する期間である。 アイドルタイムは一般的には役職が高くなるほど、短いとされる。給料の高い者ほど採用されてから機能し始めるまでの期間は短いという意味である。 なお、教育研修費には対象となる従業員のアイドルコストのみならず、❸ 算定方法

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