M&A 無形資産評価の実務
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Ⅲ1●1  無形資産の定義 145 無形資産は、物理的実態のない資産のうち金融資産以外の資産であり、以下の2つの特性のいずれかを有する資産と定義される。 ①‌‌ 法的権利を構成し、当該権利に基づいて将来獲得可能な経済的便益については法的に保護される ②‌‌ 他の資産から分離して譲渡可能である。無形資産の所有者は無形資産を単独で、または関連する契約、資産もしくは負債と組み合わせて売却したり、貸与することができる 無形資産の多くは前者の法的権利の特性を有しているが、顧客リストのように後者の譲渡可能の特性を有している無形資産もある。わが国の会計上の無形資産は、財務諸表等規則による例示では、以下のうちソフトウェアおよびのれん以外はすべて法的権利を有するものである。のれん、特許権、借地権(地上権を含む)、商標権、実用新案権、意匠権、鉱業権、漁業権(入漁権を含む)、ソフトウェア 無形資産は、その存在を示す文書が必ずある。例えば、顧客リストに関する無形資産は顧客台帳や顧客からの発注書などによってその存在が立証できる。また、無形資産は経済的寿命を有するのが一般的であり、無形資産から生じる将来の経済的便益がなくなったときにその価値は消滅するものである。ただし、無形資産としての価値はないが、法的権利としての無形資産の存在はあり得る。 企業の価値には影響を及ぼすが、前述した無形資産の特性を有していないため、まだ無形資産として認識できない次に示すような無形の経済無形資産の定義

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