M&A 無形資産評価の実務
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●4  わが国における企業結合会計と無形資産の認識077*2 ただし、米国会計基準においては、ASU第2014-02号の公表により、非公開企業はのれんを定額法により10年(または、より短い期間が適切と立証できる場合にはそれより短い期間)で償却することが認められている。とも大きな差異がのれんの償却であり、国際財務報告基準および米国会計基準がのれんの償却を認めていない*2のに対して、わが国の会計基準はのれんを償却する立場をとっている。 一方、無形資産に係る会計基準については、国際財務報告基準ではIAS第38号が、米国会計基準ではASC350が公表されているものの、わが国においては事実上、ソフトウェアと研究開発について研究開発費会計基準が公表されているのみであり、無形資産について包括的に規定した基準はない。ただし、国際財務報告基準とのコンバージェンスを図る観点から、2010年以降、企業結合のステップ2と歩調を合わせる形で、無形資産に関する包括的な会計基準の整備に向けた審議が続けられている。しかしながら、企業結合時に識別される無形資産の取扱いや、他社から研究開発の成果を個別に取得した場合の取扱いが中心的に審議されているものの、どちらも現時点で一定の方向性を打ち出す状況には必ずしも無いとの判断から、本稿執筆の段階では2013年6月に「無形資産に関する検討経過の取りまとめ」が公表されるに留まり、基準の草案を公開するなどには至っていない。 このような状況を踏まえて、本項ではまず、企業結合会計基準等の2013年改正についてその概要を述べた後、わが国における企業結合会計基準等と国際的な会計基準との間に未だ残る主な差異について概括する。また、のれんを含む無形資産については、わが国における取扱いと国際的な会計基準における取扱いの相違という観点から検討を進めたい。 なお、本節において使用している会計基準等の略称は以下のとおりである。

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