改訂にあたって 『M&A 無形資産評価の実務』の初版を発行した2006年当時から世の中は大きく動き、世界の時価総額ランキングも様変わりしたものとなっている。2006年当時は、エクソンモービルやGEといった重厚長大型の総合エネルギー企業やコングロマリット企業が時価総額の首位を占めていたが、今やGAFAを筆頭としたIT企業が主役に踊り出ており、その中で企業価値に占める無形資産の割合も飛躍的に高まり、その評価の重要性もますます増大している。また人的資本情報の開示要請もあり、無形資産に関連する関心は更なる高まりをみせている。 またM&Aが企業の成長に不可欠となり、M&Aを糧に成長する企業、さらにグローバルにその活躍の舞台を拡大する企業の活動を支えるM&Aに関する会計基準やのれんの償却の是非に関する議論などは依然として活発に行われている。日本においても、のれんの償却の是非に関する議論が行われつつも、国際財務報告基準の浸透とともに、M&Aにおける買収価格の有形・無形資産への配分手続き(パーチェスプライスアロケーション)が上場企業を中心に定着している。 本改訂にあたっては、無形資産評価に関連する項目に焦点を当て、国際財務報告基準、米国会計基準、そして日本の会計基準における企業結合会計を解説している。 パーチェスプライスアロケーションの際には、無形資産の評価に加え、有形固定資産の評価も実施されることがある。不動産のみならず動産が評価対象となることもあり、本改訂においては、動産の評価も充実させている。とかくのれんの金額とその償却の有無や年数が議論となる一方、のれん以外の無形資産を認識する事例が積み上がっている。日本企業がどのような無形資産を認識しているか事例分析も改訂した。
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