本書の初版では、長く「匿名組合」という法形式が活発には利用されてこなかった状況と、このような法形式による共同事業は、活用の仕方によっては出資者たる匿名組合員にとっても、また営業者にとっても、リスクとリターンが合理的に配分されることになる理想的な事業形態であり、欧米におけるリミテッド・パートナーシップのように、もう一つの直接金融手法として利用・発展する可能性があることを指摘しましたが、その後、匿名組合をめぐる状況は大きく様変わりしています。一時期、資産の流動化・証券化は隆盛を極め、専門家の間だけではなく、新聞紙上など一般にも「流動化・証券化」という言葉が広く知られるようになりました。また、流動化・証券化のヴィークル(器)にはさまざまな種類のものがありますが、その中でも、匿名組合を用いたスキームは、その設計の柔軟性から、多くの案件において利用されるようになりました。流動化・証券化は、わが国においては不良債権の処理等において多大な貢献があったと考えており、今後も自然災害対策としての老朽化不動産の耐震化・リノベーション、環境に配慮した建築や高齢化社会を前提とした都市再整備等、不動産に関する今後の課題に関しても、有効な手段の一つとなり得るものです。また、平成■■年には、SPC法についてその利便性を高める大きな改正がなされたほか、平成■■年には、投資信託及び投資法人に関する法律(投信法)や不動産特定共同事業法(不特法)に関しても、その活用を促進させる改正がなされました。不特法では、平成■■年改正において更に倒産隔離型スキームの導入や小規模事業者の参入障壁の緩和がなされたほか、クラウドファンディングでの取引を可能とする制度も整い、小口で分散投資できる条件が整いました。更に、近年では証券のデジタル化技術の進展とこれにともなう法整備、資金決済法の改正により、今後、一層の進展が期待されている分野です。第■版にあたって
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