現代税法入門塾
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5474.1国際税法と非居住者課税の所在◎国内税法と国際税法 各国はそれぞれ、固有の課税権を有しています。このことから、それぞれの国は、独自に自国の課税権を行使し、税制を設計することができるわけです。その結果、当然、各国の税制は異なってきます。 各国の所得課税制*1を見てみると、多くの場合、その国の居住者(個人居住者と内国法人)*2に対しては、その所得がどこの国・地域で生じたのかを問わす、すべての所得に対して課税しています。いわゆる「全世界所得課税」、「グローバル課税」を基本としているわけです。これに対して、その国の非居住者(個人非居住者と外国法人)に対しては、その国で生じた所得、つまり「国内源泉所得」だけに課税することにしています(☛3.1.2)。ポイント 全世界共通の税務に関するルールを定めた「国際税法」のような法律ないし条約はありません。国際税法とは、学問上の言い回し(概念)です。具体的には、①二国間租税条約と、②二国間の課税調整を含めた国際課税関係についてのルールを定めた国内税法の規定からなる体系をさします。わが国は、多くの国や地域と二国間租税条約を締結しています。非居住者(個人非居住者・外国法人)がわが国で所得をあげたとします。ところが、その非居住者がわが国と二国間租税条約を締結していない国や地域の居住者であるとします。この場合には、わが国の所得税法・法人税法などに規定する非居住者課税の規定を適用して課税します。 これまで、国際税法は、国境があることを前提とする「現実(リアル)空間」での国際課税問題を主な研究対象としてきました。しかし、近年、国際経済のデジタル化が急激に進んでいます。これに伴い、国際税法の研究対象は、国境があることを前提としない、目に見えない「ネット(デジタル)空間」での国際課税問題にまで大きな広がりを見せています。

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