現代税法入門塾
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所得税の課税最低限とは何かColumn 「課税最低限」とは、やさしくいえば、“その金額を超えれば税金がかかることになる限界”をいいます。いいかえると、税金がかからない最低限の範囲をさします。課税最低限は、所得税はもちろんのこと、住民税(☛1.4.8)や消費税(☛2.2)、固定資産税(☛1.4.8)などについても考えてみることができます。ここでは、所得税の課税最低限についてふれてみます。 憲法は、「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」(29①)と定め、生存権を保障しています。まさに、課税最低限とは、こうした憲法の趣旨を所得税制に活かそうというものです。このため、ふつうの生活に最低限必要な収入には課税しないことにしようというものです。わが国の所得税の課税最低限について、ふつうは、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除、基礎控除の総額とみるのではないかと思います。ところが、政府税制調査会は、これら4項目に加え、社会保険料控除、さらに、サラリードワーカー(給与所得者)の場合には給与所得控除(☛3.2.1)、自営業者(事業所得者)の場合には必要経費(☛3.2.2)を入れて、課税最低限の金額を算出しています。こうした政府税調の算出方法には、意図的に課税最低限を高く誘導する結果となっているのではないかということで、異論もあるところです。また、所得税の課税最低限については、裁判でも争われています(例えば、最判平元.2.7・判時1312号69頁・☛1.4.5、東京地判昭61.11.27・判時1214号30頁)。520(石村耕治)3.3.2人的控除◎基礎控除 納税者の合計所得金額が2,500万円以下の場合に控除されます。控除額は納税者の合計所得金額*に応じて次の金額が控除されます(所税法86)。ポイント 人的控除は、納税者の個人的な事情や背景を考慮するもので、課税最低限の保障への配慮(基礎控除、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除)と、生活する上で追加的に必要な支出への配慮(障害者控除、勤労学生控除、寡婦控除、ひとり親控除)があります。

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