第2章第1節 同族会社における法人経費〇金子宏著『租税法 第24版』(弘文堂)費用として損金に計上を認められるためには、所得税法の場合と同様に、必要性の要件をみたせば十分であって、通常性の要件をみたす必要はないと解される。したがって、不法ないし違法な支出も、それが利益を得るために直接に必要なものである限り、費用として認められる。ただし、架空の経費を計上して所得を隠匿するするために要した支出は、所得を生み出すための支出ではないから、費用にはあたらないと解すべきである(最決平成6年9月16日刑集48巻6号357頁)。43〔コラム①〕法人税法の損金の額と所得税法の必要経費の差異費用として損金又は必要経費に計上を認められるかどうかは、その費用が事業活動と直接の関連をもち、事業の遂行上必要な費用でなければならないと解されています。そして、法人税法上の「損金の額」と所得税法上の事業所得における「必要経費」に関しては、その範囲はおおむね一致していると考えられます。しかしながら、法人は、専ら営利を追求するための事業活動を目的とした消費生活を持たない主体であるのに対し、個人の事業主は、事業活動の主体であると同時に消費活動の主体でもあるという二面性を有しています。したがって、個人の事業所得の計算上、収入金額から必要経費を控除する一方で、消費活動に係る支出(「家事費」及び「家事関連費」)は必要経費に算入しないこととされています。このように、所得税法においては、家事費・家事関連費の規定がありますが、法人税法においてはそのような概念がないことが「損金の額」と「必要経費」の範囲が異なるところといえます。
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