徹底解説 課税上のグレーゾーン
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401 概要申告納税制度を採用している我が国の法人税の税務調査においては、法人が計上した経費の損金算入の適否について、古くから税務調査における論点とされてきました。特に、同族会社など個人経営色の強い法人は、一般に株式公開会社など法人の組織体制が整備されている法人に比べ、内部牽制が脆弱であることや、法人の資金と個人の資金とが明確に区分されていないケースが多く、同族会社における税務調査においては法人経費か個人が負担すべき費用かを巡り、現在もなお主要論点の1つとなっています。本節においては、法人経費に関する課税要件を確認した上で、裁決事例を含め調査事例における判断過程を検証していきます。同族会社における法人経費の範囲に関しては、ケースによっては同族会社の行為計算否認規定を適用し課税処分が行われた調査事例も見受けられています。そこで、不確定概念を用いた評価的要件の典型ともいえる同族会社の行為計算否認規定の射程範囲についても確認し、各事例の判断過程を検証してみたいと思います。本節における事例は、取引内容など事実関係はシンプルではありますが、その税務判断に当たってはなかなか悩ましい奥深さがあります。第1節 同族会社における法人経費

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