税法みなし規定の適用解釈と税務判断
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間接的に「みなし規定」の適用・否認をめぐる事案を取り上げて解説を試みることとしました。 また、法人税・消費税においては「事実」と「要件」の認定解釈によって判定されることの多い「みなし」の判断ですが、同じ税法でも、徴収の分野においてはまた様相が異なってきます。といいますのは、課税におけるみなし規定は、例えばファイナンスリース取引のように、一般の民間の取引関係を支配する私法(民法や商法)では賃貸借としているものを売買とみなすといったように、経済の実質に着目して擬制するものです。ところが、徴収の分野、特に滞納処分では、滞納者の財産を公売して滞納税金を徴収する、すなわちその所有権を買受人に移転させることから、その財産が滞納者に帰属するか否かは私法をベースに処分が行われます。ですから、私法が決めたルールを実質に合わせて擬制することはできません。 要するに、課税では実質に合わせた事実認定が行われるのに対して、徴収の分野では私法をベースにした事実認定がされます。そうしたことから、課税では役員等が会社の金銭を取得した場合に「賞与」という認定をされて課税がされた場合でも、徴収では商法の規定に応じて「金銭の贈与」とされ、第二次納税義務が課されるケースが生じます。 このように、一般には馴染みの少ない徴収の分野ですが、同一の事実に対して課税とは違う見方がされることを、特に会社の金銭が役員やオーナーらに流出したケースを基に解説を試みることとしました。 そこで本書ではこの「みなし規定」について、過去に税務調査を担当した経験をもつ3名の税理士(野田、山内、安藤)が主に法人税法及び消費税法について、第Ⅰ部・第Ⅱ部で個々のケースについて取り上げ(個々の事案について「事実」と「要件」の判定・解釈がなされることから)、それぞれQ&A形式によりその趣旨と論点、結論と留意事項について、具体的に判例等を交えながら詳解しました。また、徴収訴訟案件つき審理した経*          *

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