税法みなし規定の適用解釈と税務判断
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223 そして、私法の一つである会社法による規制では、役員が会社から得ることのできる報酬等には制限があり、その上限を超えて支払われた金銭の取得は法的に認められない=報酬等として得た金銭にはならないとしています。したがって、徴収においては、それに従った事実認定がされます。① 会社法が制限する役員への報酬等 会社(典型的なものとして株式会社を例にします)という事業主体の所有者は、株主です。ですから株主は株主総会で、会社の基本的な事項を決定しますが、日常的な会社経営に関することを、いちいち株主総会で決めるのは現実的でありません。そこで、日々の業務執行を行う機関として取締役(役員)が置かれ、そこで業務の決定をします。 会社の役員とはそういう立場ですから、会社と取締役との関係は「委任関係」です(会330)。そして委任関係において、受任者は、原則的には、委任者に対して報酬を請求することができません(民648①)。委任関係でよくある弁護士への依頼や決算書作成に関する税理士への依頼も、「高級な知的労務の提供だから対価は馴染まない」という理由で、原則的には無報酬なのですが、現実的ではないので、実際には受任契約に額を記載することで報酬の支払いを受けます。 それと同じで、役員も原則的には無報酬で会社の業務を行わなければなりません。しかしやはり現実的ではないことから、会社法は、定款または株主総会の決議で「報酬の額」またはその「算定方法等」を定めたときは、その定めに従って役員は報酬等を受けることができます(会361①)。第3章 課税と徴収のアプローチの違い株主支配会社取締役(役員)業務の委任

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