222 しかし、売上除外した金銭の役員口座への入金が調査で判明した際に、支出先の内容が説明できない、いわゆる使途不明金のときは、役員が経済的な利得を得た以外に事実を証明できません。また、調査を受けてから実は貸付金でしたといった事後的な取り繕いをして、後に実際に返したとしても、金銭を役員が取得した時点で確定的に所得は発生するので、役員給与として課税される所得はなくなりません。(注) 役員給与が損金になるかは法人税法の問題であり、貰った役員に対する所得が生じるかという所得税法とは別の問題です。なので、損金と認められない役員給与(法法34)であっても、所得税の源泉徴収義務は生じます。 役員が会社から金銭を受けた理由が「貸付け」でなく、役員たる地位に基づき経済的な利得を得たものであれば「役員給与=報酬等」という事実認定がされて、所得税が課されます。それに対して徴収では、前章で述べたように私法上の事実をベースに行うので、同じく会社から金銭が渡されたことも、私法という別の観点での見方をします。第 Ⅲ 部 国税徴収法とみなし規定支出目的:会社の経費 支出目的:役員への貸付け 課税における事実認定 徴収における事実認定 使途不明金 事後的な貸付金処理 経済的な利得を得ているか(実質判断)会社法からみてどうか(私法上の判断)会社の経費にならない 金銭の取得時に所得が発生 (2)徴収における事実認定
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