税法みなし規定の適用解釈と税務判断
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第 3 節 事実認定における課税と徴収221 こうした同一の事実に対して、課税と徴収で異なる事実認定をすることは、「それぞれの適用法令を異にすることに起因するものであって、統一がなくてもやむを得ない」という言い方がされます(吉国二郎ほか『国税徴収法精解(令和3年版)』388頁)。しかしそれでは、理解が難しいと思います。 「認定賞与」とは、法律にはない実務的に使われる用語です。一般的には、臨時に役員に供与された金銭やその他の経済的な利益供与があったときに、課税する側がそれらの供与等を実質的に役員に対する賞与(役員給与)と認定して、会社に源泉所得税をかける場合のことをいいます。 【事例1】のように、売上除外した金銭を役員個人の口座に入金させて、それを役員本人が使ってしまったような場合は、そこで経済的な利得が生じているので所得税法上の所得になり、給与所得として会社に源泉徴収義務が発生します(大阪高判平15.8.27)。 ただし、役員が引き出したお金の使われ方によっては、認定賞与にならないケースもあります。例えば、引き出したお金が会社の経費として使われていれば、役員の懐には入っていませんから単なる売上除外です。また、役員の懐に入っていた場合であっても、引き出した時点においてその金銭を会社に返還する約束があれば、それは役員への貸付金ですから、役員給与と認定されることはありません。第3章 課税と徴収のアプローチの違い売上除外の金銭 支出目的:会社の経費 支出目的:役員への貸付け 支出目的:役員への供与 認定賞与にならない 役員給与 (1)課税における事実認定

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