今般、株式会社清文社の協力を得て表題の『税法みなし規定の適用解釈と税務判断』を上梓することとなりました。考えてみれば我々税理士は、普段から「みなし」という言葉に接する機会が非常に多くあります。 『新法律学辞典』(有斐閣・新版初版)によれば、みなし規定とは「性質の異なるものをある一定の法律関係について同一のものとして、同一の法律関係を生じさせること、法律による擬制である」と解説されています。その代表的なものとして、死亡を確定させる失踪宣告(民31)や窃盗罪において電気は財物とみなす(刑245)などの規定は馴染みの深いものでもあります。携帯電話の充電のために、うっかり断りもなく飲食店でコンセントに差し込むと、場合によっては電気窃盗罪とみなされることにもなりかねません。 そのように、我々の身近なところに「みなし規定」は多々存在しています。税法の分野でも、法人税法における「みなし配当」「みなし役員」「みなし事業年度」等…挙げたらきりがないほどの規定があります。我々が日頃関与している顧問先の税務申告業務においても、法人税額や消費税額について中間申告の規定で提出がない場合、一般的には前事業年度(課税年度)の実績に基づく2分の1の申告があったものとみなすとする「みなし中間申告」はその卑近な例です。また、本書解説中でも取り上げましたが、自己株式の譲渡による収入について、確定申告で譲渡所得による分離課税で申告したところ、所得税法第25条に規定するみなし配当との指摘を受け、配当所得として課税された事例もあります。すなわち、「みなされる」のか「みなされない」のかで違った課税がなされる結果、申告税額に違いが生じてくるのです。その判断要素は事例によって様々ですが、本書では、特に問題となる法人税(関連して所得税)及び消費税について、直接的、はしがき
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