事例からみる重加算税の研究
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 税の実務上、「重加算税」の取扱いは、曖昧模糊としている。課税庁の税務執行をみても、重加算税を賦課決定することに対して、客観的な基準を持っているようにも思えないし、納税者(その代理人である税理士も含めて)自身も重加算税を課せられることに対して、確固たる基準がないために反論ができない。このように、重加算税に対しては、課税庁も納税者も今まで十分に「隠ぺい・仮装」ということの吟味がなされないままに、課税庁の一方的な裁量によって処理されてきたのである。ここ最近では、否認事項に対する重加算税の賦課決定が増加している(また、地域によって重加算税の賦課決定割合が異なっている)といわれるものの、その原因が納税者にあるのか、それとも、単に調査官の拡大解釈によるものか、定かではない。その意味では、「重加算税」の課税要件を明らかにすることが望まれる。 このような点を鑑みて、今回、日本税理士会連合会の諮問機関である税制審議会でも、「重加算税制度の問題点について」(平成12年2月14日)と題して、答申を提出している。 その内容は、次の3項目について述べられている。  ① 隠ぺい・仮装の意義と執行上の問題点  ② 現行法令上の問題点  ③ 重加算税の賦課基準等の開示と理由附記制度の創設 本書は、過去の重加算税の裁決・判例等を中心に検討し、その中から、重加算税の賦課要件(判断基準)である「隠ぺい・仮装」をできるだけ具体化し、そのポイントを示すことを目的としたものであるが、重加算税の考え方については、上記審議会の答申でも述べられているように、判例等においてもまだ統一されていない部分が多くあり、また、類似するような事件であっても、事実認定によって、その判断が異なるケースが多くみられる。したがって、本書には し が き(初版)

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