令和5年10月本書は、土地・株式等の財産評価に関し「総則6項」(財産評価基本通達6)をはじめとしてみなし譲渡所得に係る「自己株式の評価」に至るまで、専門家として押さえておかなければならない財産評価基本通達の評価方法の基本的考え方について事例形式により解答に至るまでの過程につき裁判例等を引用しながら丁寧に解説することをコンセプトに令和3年8月に刊行して以来、多くの読者にご愛読いただきました。本書を刊行した後、総則6項の適用を巡る訴訟に関して最高裁判所の判断が令和4年4月に初めて示されました。そして、その判断等を受けて、本年9月には新たなマンションの評価方法が制定されています。今回の改訂にあたっては、主に次のような見直しを行っています。第1に、総則6項に関する最高裁判所の判断を受けて、今後、総則6項の適用事例が増えてくることが想定されます。また、課税時期前後に財産の時価が顕在化している場合の当該財産の評価方法に関して多くの方が悩まれているようです。そこで、「総則6項関係」を編として独立させた上で、不動産及び株式等に係る総則6項の適用基準及び派生する問題等について多数の事例を加えました。第2に、上記の最高裁判所の判断を受け、新たなマンションの評価方法が制定されたことから、その評価方法に関して今後の相続税対策に与える影響及び総則6項の適用関係等を事例として加えました。第3に、読者の理解に資するように、各問に裁判例等及び図表等を加えることとしました。本書の内容は、財産評価に関するいわゆるハウツー本ではありませんが、各種財産の評価方法の判断に迷われた場合、あるいは、課税財産の評価を巡り課税当局と争いになった場合に専門家として役立つ反論材料を提供するものであり、今回の改訂によってさらに充実したと思っております。本書が、税務にかかわる専門家の方の少しでもお役にたてれば幸いです。本書でとり上げた事例の解答の中には、課税当局の見解と異なるようなものもありますが、それは事実関係の相違等から生じたものであり、その点は読者のご判断に委ねることになることをご理解いただきたいと思います。なお、文中意見にわたる部分は、個人的見解に基づくものであることを念のために申し添えます。終わりに、本書の改訂の機会を与えていただいた清文社及び改訂にあたって終始お世話になった同社編集局の方々に心から感謝申し上げます。新版にあたって香 取 稔
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