土地・株式等の財産評価
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第3章 4 質疑への当てはめ土地等の評価単位[1] 評価単位本件調整池は、本件土地の開発行為を行うに当たり、県からの開発許可条件として設置等が義務付けられたものです。したがって、一見すると上記3⑴の名古屋高裁判決が判示するように、本件調整池は本件物流施設が有事のための洪水調整機能を維持して安全に運営を継続するために必要なものなどといえることから、登記準則68条3号の地目が宅地とされる「建物の維持若しくは効用を果たすために必要な土地」に当たり、その地目は宅地であると判定できなくもありません。しかしながら、上記3⑵の最高裁判決が判示するように、①その開発許可条件は本件調整池の用途を制限するものであることから、宅地として認定することをかえって妨げる事情であり、また、②調整池の機能は、一般的には、開発の対象となる地区への降水を一時的に貯留して下流域の洪水を防止することにあると考えられる上、③本件調整池が本件倉庫の敷地よりも低い位置に所在しており、上記3⑴の名古屋高裁判決が判示するような本件倉庫の敷地における洪水を防止する機能を有するとも認められません。そうすると、本件調整池の地目は池沼であり、A土地とB土地は地続きではあるものの、地目はそれぞれ異なっていること、また、それぞれが別個に利用されており、両土地が一体として利用されていた事実も認められないことから、A土地とB土地の価額は、それぞれ別個の評価単位として評価するのが相当と考えます。[2] 評価方法本件調整池の価額の評価方法については、評価通達62《池沼及び池沼の上に存する権利の評価》の定めにより評価することになります。具体的には、市街化区域内の池沼の開発について条例等により制限が付されていない場合には、宅地比準方式により評価します。この宅地比準方式により評価することについて、平成3年11月30日公表裁決(裁決事例集№42)では、ため池の評価方法についてですが、「本件ため池が宅地であるとした場合の1㎡当たりの価額から、本件ため池を宅地に転用する場合において通常必要と認められる1㎡当たりの造成費に相当する金額を控除して評価する」旨裁決しています。的には、開発の対象となる地区への降水を一時的に貯留して下流域の洪水を防止することにあると考えられる。そうすると、上記条件に従って調整池の用に供されていることから直ちに、本件各土地が本件商業施設の敷地を維持し、又はその効用を果たすために必要な土地であると評価することはできないというべきである。」(下線筆者)旨判示しています。57問8 宅地に隣接する調整池の地目判定

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