会社オーナーとその後継者にとって自社株対策は事業承継対策の中心をなすものです。事業承継対策について、なんの準備・対策も実行しなかった場合には、事業のバトンタッチに伴い後継者は大きなハンデを負うことにもなりかねません。 取引相場のない株式等(以下、「自社株」といいます。)の相続においては、自社株の相続税評価額を確認することで簡単にできる株価引下げ対策もあります。 支配権を有する同族株主等においては、純資産価額又は類似業種比準価額を引き下げる対策が必要となります。そのため、株価対策で組織再編成や株式交換など時間とコストを要する対策を検討されている人もいます。また、特例事業承継税制による納税猶予制度の選択を検討している人もいます。 しかし、これらの原則的評価方式の株価引下げ対策は、長い時間と多額のコストが必要で、対策の実行に伴う副作用が生じることがあります。また、納税猶予制度は、適用を受けた後においても自社株の継続保有など多くの制約を受け、その後の機動的な事業承継対策を行うことが困難となります。 一方、同族株主の中でも支配権を有しない少数株式所有者や、同族株主以外の株主であれば特例的評価方式(以下、「配当還元方式」といいます。)によって評価され、多くの中小企業は既に無配か配当率は10%以下である会社が多く、配当還元価額は額面金額(資本金等の額÷発行済株式数)以下である会社が大半と思われます。また、配当還元方式による株価引下げ対策は、直前期末以前2年間の配当金額を2で除した配当金額を基に評価されますので、配当金額を引き下げるだけで、会社の貸借対照表に影響を与えるような対策の必要がありません。そのことから、配当還元方式によって移転することができる者に自社株を譲渡、贈与、相続又は遺贈することで、即効性のある自社株対策が可能です。 さらに、配当還元方式による対策は、原則的評価方式の株価対策と比して、時間やコストはさほど必要なく、対策実行に伴う副作用もほとんど生じません。はじめに
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