令和5年度税制改正により、暦年課税では令和6年1月1日以後の贈与より、贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間を相続開始前3年以内から7年以内に延長する改正がありました。これは昭和33年に導入されて以来、65年ぶりの改正です。 また、平成15年に創設され、その後およそ20年間運用されてきた相続時精算課税制度にも大きな改正がありました。相続時に加算しない相続時精算課税の基礎控除110万円の創設、相続時精算課税制度で受贈した土地・建物が災害により一定以上の被害を受けた場合には相続時にその加算する課税価格を再計算する制度の創設です。 政府は令和3年度与党税制改正大綱で「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の精算課税と暦年課税のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転時期の選択により中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める」と明記し、その後、政府税制調査会に「相続税・贈与税に関する専門家会合」が設けられ、具体的な検討が進められました。 「相続税と贈与税の一体化」、「資産移転時期の選択に中立的な税制」ということに主眼をおいた結果としての令和5年度税制改正です。 この改正を契機に、相続時精算課税制度の利用が検討される機会が増えると予想します。 本書はそのような状況で、相続時精算課税制度の基礎から他税目との関わり、民法との関わり等、実務上の留意点を網羅することを念頭に置いています。 実務で相続時精算課税制度の利用を検討する際に、皆様方の一助になり、幾分かでも参考になれば幸いです。 本書は相続時精算課税制度を中心に記述しているため、それ以外の制度を解説している部分に関しては、細かい適用要件等の記載を省略、割愛している部はじめに
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