相続税申告書 最終チェックの視点
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49第2節 全部事項証明書から情報を読み取る資金の借入を行った時に根抵当権を設定させていることがわかります。しかし、定雄さんの令和元年分の所得税及び復興特別所得税の準確定申告書に添付された青色申告決算書には貸借対照表の記載があり、相続開始日現在の「借入金」の欄は空白になっていました。根抵当権は債務の全額を弁済しても消滅しない抵当権であり、「借入金」の欄が空白になっていたことと特段の矛盾はありませんが、根抵当権者である〇〇信用金庫との間の債権(預金債権)と債務(借入金)の存在について確認しておく必要があるでしょう。(2)根抵当権の特徴例えば、被相続人の略歴書で特段事業をしていたとの記載がなかったにもかかわらず、被相続人所有の不動産に根抵当権の設定・抹消の登記がある場合、被相続人が生前に事業を行っていたのではないかとの疑問が生じます。それは、根抵当権が金銭消費貸借契約を繰り返すことを前提とした(完済時や新たな借入時に抵当権抹消登記・設定登記を逐一しなくて済むようにした)抵当権であり、一般的には、いわゆる「商売人」の利用を想定したものであることから、サラリーマンや不動産所得のみで生計を立てる者にとってはあまり馴染みがないものです。同様に、被相続人が保有する銀行口座に「当座預金」が含まれるケースも、被相続人が生前に事業を行っていた可能性を示す事象です。当座預金は手形・小切手を振り出すことができる決済性の預金ですので、一般的には「商売人」以外の者が保有することは想定されません(先代が事業を行っていて、その口座を相続により承継した可能性はあり得ます)。

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