相続税申告書 最終チェックの視点
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48第2章 土地の財産評価共有で取得したようで、取得の当時に抵当権の設定はなかったようです。定雄さんは事業主・世帯主であり、定子さんと定信さんを扶養している立場であることから、当時の購入価額である約1億5,000万円(≒1坪100万円×500㎡/3.3㎡)の3分の1である約5,000万円の資金を融通できたことは特段不自然ではありません。しかし、定子さんは平成2年の時点で専業主婦であり、年金の受給も始まっておらず、この全部事項証明書の限りでは借入もないようであり、約5,000万円の資金をどこから融通したのかという疑問が生じます。また、定信さんは、本件不動産の取得の時点では13歳の未成年であり、定子さんと同様に約5,000万円の資金をどこから融通したのかという疑問が生じます。1億5,000万円はあくまで土地のみの価額であり、共同担保目録によるとその土地の上に家屋もあるようですので、実際の取得価額は更に高いことも想定されます。(2)登記事項が真実とは限らない登記をすることにより第三者に対する対抗力を得ることができますが、そうであるからといって、その登記事項が真実であるとは限りません。不動産の登記簿に記載された内容に効力が生じることを「公信力」といいますが、日本の登記制度では、記載された内容は一般的には正しいものの、真実の権利関係と登記の記載とが異なっているときは、仮にその記載を信用しても、これを保護することができないのが原則であり、登記簿の記載より真実の権利関係を優先させることになります。つまり、不動産の登記には「公示力」はあっても、「公信力」まではありません。とりわけ、実質課税の原則の考え方が働く税法においては、たとえ登記名義が定子さんや定信さんであったとしても、その資金の原資が例えば定雄さんのものであり、定子さんや定信さんに受贈の認識がなければ、それは定雄さんの財産であると判断される可能性があります。本件については、改めて定子さんや定信さんにヒアリングしたところ、取得資金である1億5,000万円の全額を定雄さんが拠出していたにもかかわらず、「いずれ相続を迎えた時に自分(定雄さん)の相続財産が少ない方が良いから」と定雄さん主導で家族3分の1ずつの共有の登記にしたそうで、お2人とも所有権の認識はお持ちでないようでした。2. 根抵当権の登記(1)根抵当権に対応する債務の存在本件不動産の全部事項証明書の「権利部(乙区)」を見ると、平成10年に定雄さんが事業

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