相続税申告書 最終チェックの視点
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はじめに令和元年12月に国税庁が公表した「平成30年分 相続税の申告事績の概要」によれば、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は11万6,341人(死亡者数に対する割合8.5%)であり、小規模宅地等の特例などの適用によって相続税額は生じなかったものの提出された申告書に係る被相続人数も含めると14万9,481人(同11.0%)に上ります。上記の人数及び割合は、平成27年の改正相続税法による遺産に係る基礎控除額の圧縮などを契機に大幅に上昇したところですが、令和2年10月末日における税理士登録者数は7万9,180人であり、そのような環境下においても、税理士1人当たりの年間相続税申告件数は2件にも及びません。この「2件にも及ばない」は飽くまで平均値であって、税理士業界の実際は、「相続税専門」を謳う一部の税理士事務所が経験・ノウハウを蓄積する一方、「たまに依頼があれば相続税申告に対応するという税理士事務所」も多数存在し、両者に大別される傾向が顕著になっています。税理士法人チェスターは、平成20年の創業時に「相続税専門」を掲げ、一貫して相続税申告に経営資源を集中させてきた結果、令和元年の相続税申告件数は1,358件に達しました。不動産仲介・法律事務所・司法書士事務所などを含めたグループの連結従業員数は200人に達しましたが、そのうちの税理士登録者を分母とした「税理士1人当たりの年間相続税申告件数」は数十件に達し、相続税の申告期限が10か月以内であることを踏まえれば、1人の税理士が常に年間数十の事案に同時並行的に携わっていることになります。1つとして同じ個性の事案はなく、財産規模が大きくないからといって平易な業務であるとは限らないのが相続税申告業務の奥深いところですが、それに専従する専門職スタッフの経験値が自ずと高まることは申し上げるべくもありません。税理士法人チェスターの業務品質を支える具体的な仕組みについては、後の審査担当者コラムなどによってご案内することになりますが、その要諦は「審査」体制にあるものと考えています。この「審査」体制、換言すれば、以下の要請を担保する仕組みを事務所内部に敷設し、効果的に運用することによって、業務水準の維持・向上を図っています。❶ 無謬性の確保された申告書を安定的かつ効率的に生み出すこと❷  申告内容が被相続人を取り巻く環境に整合し、全体最適の視点で吟味されていること❸ 明確な答えのないような事案について筋の通った申告方針を示すこと前述の「たまに依頼があれば相続税申告に対応するという税理士事務所」にとっては、申告書を起案するだけで精一杯で効果的な「審査」にまで手が回らず、「審査」の視点が欠

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