相続税対策実践ハンドブック〔遺産分割・申告実務編〕
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68相続の放棄があっても、取得することができる財産には、以下のようなものがあります。①生命保険金や退職手当金など死亡保険金及び死亡退職金などの財産については、保険金受取人固有の財産であることから、相続の放棄をした人でも、死亡保険金などを受け取ることができます。また、保険料負担者以外の者が保険契約者となっている場合に、保険料負担者が死亡したときは、生命保険契約に関する権利を保険契約者が遺贈によって取得したものとみなされ、その保険契約者が相続の放棄をしても保険契約者としての地位の変更はありません。②遺族年金公的年金に加入している方が亡くなったときに、その家族に支給されるのが遺族年金です。遺族年金は、遺族がその固有の権利に基づいて受給するもので、相続財産には含まれません。よって、相続放棄をした場合でも、遺族年金を受け取ることができます。③未支給年金未支給年金請求権については、死亡した受給権者に係る遺族が、未支給年金を自己の固有の権利として請求するものですので、相続放棄をした場合でも、未支給年金を受け取ることができ、死亡した受給権者に係る相続税の課税対象にはなりません。なお、遺族が支給を受けた未支給年金は、遺族の一時所得に該当します。相続の放棄をした結果、相続人がいなくなったような場合に、相続放棄した者も、特別縁故者として財産分与の申立ができます。相続放棄したことは、特別縁故者になる障害になりません。その場合、どのくらいの遺産が与えられるかについては、「残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる(民法958の3①)」と規定されていて、裁判例(神戸家裁尼崎支部:平成25年11月22日審判)では、全遺産が与えられた例もあります。⑤墓地などの祭祀財産民法897条では、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、・・・慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継し、慣習が明らかでないときは、その権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。」としています。墓地などの祭祀財産は、一般の相続財産とは別個に承継されるものとされていることから、これらは相続財産に属さないこととされています。⑴取得することができる財産等④特別縁故者として財産分与を受けることができる相続を放棄しても取得することができる財産・年金等

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