相続税対策実践ハンドブック[生前対策編]
3/22

(注)文中解説において、推定被相続人及び推定相続人を、単に「被相続人」及び「相続人」として表記している部分がありますので、解説の内容に応じて読み替えをお願いします。厚生労働省が公表している簡易生命表(令和3年)によると、平均余命(ある年齢の人々があと何年生きられるかいう期待値)が10年以上とされるのは、男性の場合78歳以下、女性は82歳以下となっています。また、健康寿命は、厚生労働省の「健康寿命の令和元年値について」によると、男性72.68歳、女性75.38歳と報告されています。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく、自立して生きられる期間のことを指します。認知症などによって意思能力が失われると相続対策を実行することができなくなりますので、早めの着手が必須です。一方、相続の開始が間際になってから慌てられる人もいれば、あきらめてしまう人もいます。しかし、このような残された時間があまりない状況下でも、意思能力があれば、限られた対策ですが打つ手はあります。一例を挙げれば、令和5年度税制改正において生前贈与加算の対象期間が3年から7年に延長されましたが、相続又は遺贈によって財産を取得しない孫などへの暦年贈与は相続財産に加算されませんので、相続税の限界税率よりも低い贈与税の負担割合で贈与することで相続税を軽減することができます。そこで、本書では、生前対策にかける時間の長短に応じた具体的な相続対策について解説しています。限られた紙面ではありますが、分かりやすく解説するために設例を用いて数値で確認できるようにしています。また、コラムによって実務上の疑問点などの解消のために役立つよう工夫しています。なお、本書は、平成10年に初版を発刊し、令和3年まで毎年改訂を重ねました『タイムリミットで考える相続税対策実践ハンドブック』をリニューアルしたものです。旧版のうち相続発生前の対策を「生前対策編」として本書にまとめています(相続発生後の対策をまとめた「遺産分割・申告実務編」は令和5年1月に発刊しています。)。筆者は浅学非才でありますが、実務に従事しながら相続対策の基本とその取組み方について多くの事例を体験し、その中から得た内容などをこの本にまとめています。内容等について今後検討を必要とする部分もあることと思いますが、読者諸賢にとって相続対策のヒントとなる一項目でもあれば筆者の望外の喜びとするところです。なお、文中意見にわたる部分は私見であり、設例の数値は原則「万円」単位で表示し、端数処理については四捨五入してありますので、その旨ご留意ください。最後になりましたが、清文社の編集部の皆さまには大変ご苦労をおかけしました。この紙面を借りて心よりお礼申し上げます。令和5年9月税理士山本和義

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る