相続税対策実践ハンドブック[生前対策編]
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令和3年に死亡した者(1,439,856人)について、令和4年に相続税の申告を行うと仮定した場合に、その申告件数(課税状況)は134,275件、課税割合は9.3%となっていて、およそ10人に1人の割合で相続税が課されます。標準的な家族構成である親子4人家族の相続税の基礎控除額は4,800万円で、都心にマイホームを所有し、老後を安心して暮らすための最低限の生活資金を保有しているだけで相続税が課税されるような状況にあります。そのため、相続対策への関心が高まってきています。相続対策において、優先すべき課題は「争族の防止」です。次に「相続税の納税資金対策」をしっかりと実行することで、副次的効果によって「相続税等の軽減」にも役立つというような取組み方が望ましいと思います。節税重視型の対策は、相続税法や財産評価基本通達などが頻繁に改正されることから期待した節税効果が得られないことにもなりかねません。相続税等の軽減対策よりも「家族の幸せ対策」が重要で、遺産分割協議でもめないように、生前の対策や、財産を承継させたい人に確実に残すことができるような対策を実行しておきたいものです。相続対策は、①現状を正しく把握し、②問題点とその対処法についてあらゆる角度から検討し、③対策の実行について意思決定して、④具体的に対策を実行に移し、⑤その効果を検証しつつ定期的に見直しをするようにしなければなりません。また、相続対策は、一定の前提条件を基に対策を実行することになります。そのため、前提条件が異なると自ずと期待した効果が生じない場合や、逆効果になってしまうこともあります。前提条件で欠かせないものとして、死亡する順番を想定します。例えば、父→母の順に相続が開始すると仮定し、相続対策にかけることができる時間は何年とするかについても前提条件として定めて対策を立案することになります。相続対策は、生前に長い時間をかけて実行すれば、少ないコストと小さなリスクで効果を得ることが期待できます。相続税法等に規定する各種特例等の適用を受けるためには、生前に適用要件等を確認し、必要な対策を実行しておくことが欠かせません。そのため、不動産や金融資産などの調査や資料収集にかなりの時間を要し、具体的な対策立案、実行可能なものの検討、実行の順序の決定など対策に着手するまでの期間は最短でも3か月は必要です。更に、対策に着手してからその効果が期待できるまでには3年以上の年月が必要な対策が多いのが現実です。はじめに

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