新版 タイムリミットで考える 相続税対策実践ハンドブック 〔生前対策編〕
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相続税は、平成27年に相続税の基礎控除額が引き下げられた影響で、令和2年の申告件数(課税状況)は120,372件、課税割合は8.8%となっています。標準的な家族構成である親子4人の家族の相続税の基礎控除額は4,800万円で、都心にマイホームを所有し、老後を安心して暮らすための最低限の生活資金を保有しているだけで相続税が課税されるような状況にあります。そのため、相続対策への関心が高まってきています。相続対策において、優先すべき課題は「争族の防止」です。次に「相続税の納税資金対策」をしっかりと実行することで、副次的効果によって「相続税等の軽減」にも役立つというような取組み方が望ましいと思います。相続税等の軽減対策よりも「家族の幸せ対策」が重要で、遺産分割協議でもめないように生前の対策を行うことや、財産を承継させたい人に確実に渡すことができるような対策を実行しておきたいものです。相続対策を進めるためには、①現状を正しく認識し、②問題点とその対処法についてあらゆる角度から検討し、③対策の実行について意思決定して、④具体的に対策を実行に移し、⑤その効果を検証しつつ定期的に見直すようにしなければなりません。そのため、不動産や金融資産などの調査や資料収集にかなりの時間を要し、具体的な対策立案、実行可能なものの検討、実行の順序の決定など対策に着手するまでの期間は最短でも3か月は必要です。更に、対策に着手してからその効果が期待できるまでには3年以上の年月が必要な対策が多いのが現実です。相続対策は、生前に長い時間をかけて実行すれば、少ないコストと小さなリスクで相続対策の効果を得ることが期待できます。相続税法等に規定する各種特例等の適用を受けるためには、生前に適用要件等を確認し、必要な対策を実行しておくことは欠かせません。厚生労働省が公表している簡易生命表(令和2年)によると、平均余命(ある年齢の人々があと何年生きられるかいう期待値)が10年以上とされるのは、男性の場合79歳以下、女性は83歳以下となっています。一方、健康寿命は、厚生労働省の「健康寿命の令和元年値について」によると、男性72.68歳、女性75.38歳と報告されています。健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく、自立して生きられる期間のことを指します。具体的には、平均寿命から寝たきりや認知症などで介護が必要となる期間を引いたものです。認知症などはじめに

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