新版 タイムリミットで考える 相続税対策実践ハンドブック 〔生前対策編〕
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生前贈与を活用した対策長期対策編Ⅳ父から時価1,000万円、相続税評価額800万円の住宅の贈与を受ける代わりに、父の600万円の借金を返済する場合1,000万円-600万円=400万円400万円が贈与財産の価額になります。います。一般的な贈与は贈与者だけが「財産を無償で与える」という義務を負う「片務契約」になりますが、負担付贈与は、受贈者に一定の条件を付けて贈与するため、受贈者もその条件を履行する義務を負う「双務契約」となります(民法553)。例えば、「貸家を贈与するが、受贈者は家賃の何割かを贈与者の妻に与える」といったものです。個人から負担付贈与を受けた場合は、贈与財産の価額(時価)から負担額を控除した価額に贈与税が課税されることとなります(相基通21の2-4)。一般的な贈与(前記①の贈与)の場合、「贈与された財産の価額」は「相続税評価額」になりますが、負担付贈与の場合は「通常の取引価額に相当する金額」が贈与された財産の価額になります。以上のほか、贈与の種類としては、「混合贈与」(例えば、時価よりも低い対価で財産を譲渡し、時価との差額を贈与するという、双方の間に贈与の合意があるもの)や、「定期贈与」(毎年又は毎月一定の金銭又は物を給付するというように定期的に履行する贈与)などがあります。【預り保証金(敷金)付きで収益物件を贈与した場合の負担付贈与の判定】平成16年に国税庁が発表した「相続時精算課税に関する質疑応答事例について」(情報)では、預り保証金付きで贈与した場合の取扱いについて、次のように解説されています(問は省略し、答のみ記載)。敷金とは、不動産の賃借人が、賃料その他の債務を担保するために契約成立の際、あらかじめ賃貸人に交付する金銭(権利金と異なり、賃貸借契約が終了すれば賃借人に債務の未払いがない限り返還される。)であり、その法的性格は、停止条件付返還債務である(判例・通説)とされている。また、賃貸中の建物の所有権の移転があった場合には、旧所有者に差し入れた敷金が現存する限り、たとえ新旧所有者間に敷金の引継ぎがなくても、賃貸中の建物の新所有者は当然に引継ぐ(判例・通説)とされている。ところで、本件問いのように、旧所有者(父親)が賃借人に対して敷金返還義務を負っている状態で、新所有者(長男)に対し賃貸アパートを贈与した場55【注意点】

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