52贈与とは当事者の一方(贈与者)がある財産を無償で相手方(受贈者)に与える意思表示をし、相手方が受諾することによって成立する契約です(民法549)。本来贈与は、恩恵・好意・謝意等の原因を動機としてなされるものですから法規範の対象外と考えられるのですが、近代民法は贈与を契約としてとらえて法的な拘束力を与えています。日本の民法では贈与を「不要式の諾成契約」としています。つまり、贈与者が「あげましょう」という意思表示を行い、受贈者が「受け取ります」という意思表示をすれば、贈与契約は成立します(民法549)。また、贈与契約は書面による必要はありませんが、書面によらなかったときは、給付を履行する前であれば、いつでも取消しができます。このように「書面によらない贈与はいつでも取消しができる」としたことにより、書面による贈与のみに法的な拘束力が与えられました。これは、贈与者の軽率な行為を戒め、贈与者の意思を明確にすることによって後日の紛争を避けるためです。法律上、贈与の目的となる財産には制限がなく、贈与者の負担において受贈者の利益となる内容であればよいことになっています。しかし、財産の実体が減少しない「使用貸借」や「無償の労務給付」等は、原則として贈与の目的にはなりません。贈与者が生存中に自分の財産を無償で他の人に与えることで、一般に「贈与」といえばこの生前贈与を指します。①生前贈与口頭でも書面でも可贈与財産には制限がない贈与の種類一贈与とは
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