はしがき一般的に、相続税を理解し、かつ、単なる知識としてではなく日常実務のなかで使いこなせるようにするためには、相当の習熟と経験が必要であるといわれています。また、所得税及び法人税が簿記や会計学の延長線上にあるものとして比較的容易に会計学を習得した者にとってはなじみがあると理解されるのに対して、相続税は税法と名が付くものの、簿記会計とはまったく無縁で、経済(商)学的な知識ではなく、民法を中心とした法学的な知識を必要とする領域で、極めて独自の世界を形成している点に特徴が認められます。このような特徴を有する相続税について、初学者でも無理なく知識を習得し、相続税実務におけるスキルアップを図っていただけること、及び初学者の域を超えた中習者の方にとっても基本的知識の再確認をしながら更に一歩上を目指していただけることを目的として企画したのが本書です。本書の特徴は、下記に掲げるとおりです。相続税を理解するためには、『まずは民法から』との考え方に基づいて、本書を下記に掲げるとおりの三部構成としています。(次に、各構成の特徴を掲記しておきます。)第1章民法相続編相続税を理解するために不可欠な範囲に絞って民法知識の習得を図ることを目的として構成しています。民法を初めて学ぶ方にも容易に取り組めるようにまとめてあります。第2章相続税申告編第1節相続税……相続税の全般的な計算構造を体系的に理解することを第一義として、当該計算体系を構成する各個別項目の詳細について理解することを目的として構成しています。第2節贈与税……一般的に、『贈与税は相続税の補完税である。』といわれていますが、この点に注視しながら、贈与税の計算体系、個別重要規定及び贈与税と相続税の関係等について理解することを目的として構成しています。第3節財産評価……相続税を計算する場合の基礎は財産評価です。相続税は『財産評価に始まり、財産評価に終わる。』といっても過言ではありません。そこで、本節では、不動産、有価証券(上場株式、同族会社株式等)を中心に、実務上、確認しておきたい財産の評価方法等について、基本から応用項目まで幅広く解説しています。第3章相続税対策(事前・事後対策)編相続税の仕組み及び計算方法を学んだ後に、相続税対策に取り組みたいと考えることは実務上よくあることです。本章では、まず相続税対策に対する基本的な考え方を解説し、その後、相続発生前の対策(例賃貸住宅建築と相続税の減額効果)、ロ相続発生後の対策(例遺産分割を工夫することによる評価単位の分割及び未分割の防止)からハ相続承継後におけ
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