●課税方法の分類● 所得税は、納税者が自分自身で1年間(1月1日~12月31日)に発生した所得とその税額を計算して、それを翌年2月16日から3月15日(土・日・祝祭日の場合はその翌日)までの間に税務署に確定申告して納税する方法を採っており、これを申告納税制度といいます。所得税を計算する場合、その所得がどのような種類の所得に当たるのかを区分することから始めなければなりません。というのも、一般に所得税がかかるといっても、例えばその所得が事業所得や給与所得のように自ら働いて得たものか、利子所得や配当所得あるいは不動産所得のように所有している資産から生み出されたものか、譲渡所得のように財産を売って得たものか、あるいは毎年経常的に発生するものか、たまたまその年に発生したものかといったように、所得の発生源泉は様々で、これを一律に課税することにすれば、税負担の公平さを欠くことにもなるからです。そこで、その所得を10種類の所得のいずれかに分類して、その種類に応じた課税方法により課税されることになっています。 所得税の課税方法としては、①総合課税、②申告分離課税、③源泉分離課税の3つがあります。原則的には各種所得を合計する総合課税の方法によりますが、ある種の所得については、確定申告による総合課税の方法になじまないことを理由に源泉分離課税の方法がとられたり、政策的な配慮から、ある種の所得に対しては特に税金を軽く又は逆に重くするために他の所得と合計することなく単独で課税する申告分離課税の方法がとられたりして、税負担の公平が図られています。 10種類の所得の課税方法と計算方法をまとめてみますと、次のようになります。総合課税申告分離課 税源泉分離課 税申告された各種所得を総合(合計)し、所得控除を差し引いた上で、累進税率を適用して税額の計算をする方法をいい、通常はこの方法で課税されます。累進税率とは所得が増加するにつれて税率も上昇していくような構造の税率をいいますが、これを適用することにより所得の多い人ほど税金の負担もより重くなるというわけです。総合課税とは対照的に、特定の所得については他の所得と総合(合計)せずに、その特定の所得にだけ特別に決められた税率をかけて税額を計算し、申告する課税方法をいいます。仮に総合課税を受けたとしたら高率の税率が適用されるような場合でも、分離課税とされることにより所得の額からみれば低率の税率が適用されるなど(逆に負担を重くする場合もあります)、特に税金を軽く(あるいは重く)するときに使われます。①利子収入、②割引債の償還差益、③金融類似商品等の利益や差益等は税金が特別の税率で徴収され、受け取る時に天引されるだけで、その所得に対する納税が完了する課税方法です。この方法によれば、その所得については、確定申告が不要となり、この点が申告分離課税と違う点ですが、分離課税の効果という点では同じです。序 章まずは所得税のアウトラインをつかむ1
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