不動産の貸付から発生する所得は、不動産所得として所得税の確定申告が必要となります。ところが、いざ自分で所得を計算して確定申告をしようと思っても、「不動産所得に的を絞って分かりやすく解説されている本が見つからない。かといって、専門家に頼むほどでもないし…」という方が多くいらっしゃいます。そんな方のために、本書は、できるだけわかりやすく、初めての方でも自分で確定申告ができるようになることを念頭に、可能な限り図表を用いて解説するように心がけました。また、確定申告の項目だけに留まらず、所得税や相続税の節税対策にも触れていますので、幅広く活用いただけるものと思っています。 さて、固定資産税の負担や相続税の負担で気になるのが、今後の土地の価格の動向です。 路線価に目を向けますと、令和3年度は前年より0.5%の下落でしたが令和4年度は0.5%の上昇となりました。新型コロナウイルス感染症が沈静化し経済が活発化すれば、それにつれて地価の上昇が始まることが考えられます。多くの地主さんにとっては、地価の上昇は固定資産税の負担増を招きます。 また、平成27年度から相続税の基礎控除額が引き下げられており、そして今後路線価の上昇が続けば、将来の相続税の負担が増大していくことが考えられます。そのようなことから今後ますます土地の有効活用の必要性が増すことでしょう。 さて、土地の有効活用のために、所有している土地を自己の事業用として使うケースもありますが、収益を上げるために不動産を貸付けの用途に供する場合がほとんどです。年間どれだけの収益を上げ、その結果、キャッシュがどれくらい残せたかを常に把握しておくことが、不動産賃貸業を行う上で重要になります。 本書では、確定申告に関する項目や節税対策以外に、なぜキャッシュフローの考え方が重要なのかが分かるように、貸付不動産のキャッシュフローについても設例をまじえて解説しています。 貸付不動産が複数ある場合、それぞれの物件ごとにキャッシュフローの計算をし、どの物件がキャッシュを生み、どの物件がキャッシュを流出させているのかといったことをそれぞれ物件ごとに分析し、キャッシュ不足の原因を追究するといった方法も解説しています。これによって“所得はあれども資金なし”の原因が分かるようにしています。これからの賃貸住宅経営は、キャッシュフロー重視はじめに
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