プロフェッショナル 消費税の実務
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 これに対する回答の主要部分は、次のとおりです。1 取引対価の引下げ  取引上優越した地位にある事業者(買手)が、インボイス制度の実施後の免税事業者との取96Q7 仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことを検討していますが、独占禁止法などの上ではどのような行為が問題となりますか。A  事業者がどのような条件で取引するかについては、基本的に、取引当事者間の自主的な判断に委ねられるものですが、免税事業者等の小規模事業者は、売上先の事業者との間で取引条件について情報量や交渉力の面で格差があり、取引条件が一方的に不利になりやすい場合も想定されます。  自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることは、優越的地位の濫用として、独占禁止法上問題となるおそれがあります。  仕入先である免税事業者との取引について、インボイス制度の実施を契機として取引条件を見直すことそれ自体が、直ちに問題となるものではありませんが、見直しに当たっては、「優越的地位の濫用」に該当する行為を行わないよう注意が必要です。…2.帳簿の記載 この経過措置の適用を受けるためには、帳簿に、例えば「80%控除対象」、「免税事業者からの仕入れ」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載しておかなければなりません。この記載は、適用対象となる取引に、「※」や「☆」といった記号・番号等を表示し、これらの記号・番号等が「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を別途「※(☆)は80%控除対象」などと表示する方法も認められます。3.インボイスの保存がない課税仕入れの税抜経理 税抜経理方式で経理している場合であっても、控除できない2割部分の税額については、仮払消費税等の額とはならず本体価額に含めることになります。詳しくは、781頁を参照してください。4 買手は、登録をしない仕入先に対して価格交渉を行う場合には、独占禁止法又は下請法に配慮することが求められます。 事業者が取引相手にどのような条件を提示するかは自由ですが、取引上の地位が相手方に優越している者が、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当な不利益を相手方に押し付けることは、独占禁止法が禁止する優越的地位の濫用となるおそれがあります。 公正取引委員会等は、「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」(令和4年1月19日 改正:令和4年3月8日、財務省・公正取引委員会・経済産業省・中小企業庁・国土交通省)を公表して、注意を促しています。その中に次のQ7があります。仕入先が登録しない場合の対応

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