プロフェッショナル 消費税の実務
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 「消費税とは何か」については、多くの議論がありますが、現行の消費税は、「消費支出に広く負担を求める」税であり、事業者を納税義務者としたうえで、国内において事業者が行う資産の譲渡等を課税の対象とし、税の累積を排除する前段階税額控除の仕組みをとっています。事業者が納付すべき税額は、売上げの税額から仕入れの税額を控除して算定されますが、これは、他者との一つひとつの取引について、それぞれの拠出額を基礎に、最終消費に係る税負担を測定しようとするものです。 売上げの税から仕入れの税を控除する仕組みは、益金の額から損金の額を控除する法人税の所得金額の計算に近いものに見えます。消費税と法人税とは、その帳簿を共有し、売上げや仕入れの認識の基準は重なり合うことが多く、消費税は、できる限り法人税における処理に準じる、という態度も見せています。 しかし、所得の金額の計算は、収益と費用との差額を利益とする会計に由来し、期間利益を求めることが基本であり、両者のロジックは全く異なっています。消費税は、法人税とは違った独自のロジックに従って課税要件を定めているということを絶えず意識しながら、課税関係の確認を行うことが重要であるといえるでしょう。 もとより、課税要件は法令に定められたところによりますが、租税法の適用にあたっては、通達その他の方法による課税庁の解釈の表明を確認する必要があり、それは課税要件事実の認定にあたっても重要な作業であるといえます。 また、納税者と課税庁とに争いが生じた場合には、不服申立て又は訴訟によってその行政処分の是非が決せられます。その判断は、ときに判例となり、あるいは実務にあたってのリファレンスとなります。本書は、このような点を踏まえ裁判例及び裁決例を紙幅の許す範囲で適宜選択して掲載しました。国税不服審判所の裁決事例集に公表された裁決事例については、その掲載箇所を示し、非公開裁決及び裁判事例については、日税連税法データベース(TAINS)よりデータの提供を受けて、その内容を筆者が要約しています。 本書は、平成20年8月に、三木義一教授監修のもとに発刊し、翌年「税務力UP」シリーズの1つとなったものです。平成25年にはシリーズを卒業して新版とし、9度の改訂版を経て、令和5年10月改訂版(十一訂版)の発行となりました。  令和5年10月金井 恵美子 はしがき

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