プロフェッショナル消費税の実務
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インボイス導入前の支払額を維持する場合控除できない消費税等相当額を減額する場合100→買手の利益減少→売手の利益減少(1)帳簿の記載 この経過措置の適用を受けるためには、帳簿に、例えば「80%控除対象」、「免税事業者からの仕入れ」など、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載しておかなければなりません。この記載は、適用対象となる取引に、「※」や「☆」といった記号・番号等を表示し、これらの記号・番号等が「経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨」を別途「※(☆)は80%控除対象」などと表示する方法も認められます。(2)区分記載請求書等の保存 区分記載請求書等と同様の記載事項が記載された請求書等の保存が必要です。 現行法においては、区分記載請求書等は「紙」で交付されるものに限られており、区分記載請求書等の記載事項に係るデータの提供を受けて「紙」の交付を受けない場合には、区分記載請求書等の保存がないものと整理されます。しかし、インボイス制度においては、区分記載請求書等の記載事項に係るデータの提供を受け、そのデータを保存する場合にも、経過措置の適用が認められます(平28改法附52①②、53①②)。3.利益の減少 上記の経過措置があっても、登録事業者以外からの仕入れについては、控除できない税額は買手の費用になってしまいます。 これは、消費税等を外税として支払っていた場合だけでなく、消費税等を明示せずに支払っていた場合にも生じる問題であり、従前の支払額を継続すれば買手の利益が減少し、消費税等相当額の減額をすれば売手の利益が減少します。4.事業継続のための課税事業者の選択 免税事業者は、仕入税額控除をできないという理由で、取引から排除される可能性、あるいは、消費税相当額を支払わない交渉をされる可能性があります。事業を継続するために、課税事業者を選択する必要があるかどうか、検討しなければなりません。 登録を受けるかどうかは事業者の任意ですが、上記のような利益の減少を考慮すれば、事業者を顧客とする課税事業者が登録を受けないということは、通常考えられないでしょう。したがって、令和5年10月1日以後に登録番号を記載しない請求書等を交付すれば、それは得意先に対して、自らが消費税の申告納税を行わない免税事業者であることを告白することになります。 納税義務が免除される小規模の事業者であっても、相当程度が課税事業者となることを選択して登録するものと考えられ、財務省は、これによる税収増が2,480億円になると試算してい

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