原価計算の税務
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本書は、製造業等の原価計算について、法人税に関する実務処理を中心として解説している。原価計算は、企業会計における計算および処理が中心となることから会計実務を省くことはできないが、本書では、企業会計での原価計算については概説に止め、法人税での原価計算に関する取扱いを主たるテーマとしている。原価計算は、企業会計にとっては企業利益を算定するため、法人税にとっては課税所得を算定するための重要な地位を占めていることは、論を待たない。本書では、企業の経理担当者や税理士の方々を対象とし、法人税における原価計算の実務や関連する税務調査関係を中心に解説している。原価計算に係る税務上の取扱いは、古くて新しい問題である。製造業の原価計算の原則は、当時の大蔵省企業会計審議会の中間報告として昭和37年11月8日付で公表された「原価計算基準」となる。原価計算の範疇となる各項目ではそれぞれ会計基準が公表されているが、基本となる「原価計算基準」は昭和37年に公表されて以来、専門家の間では改訂の議論はあるものの、現在に至るまで改訂されていない。日頃から原価計算と向き合っておられる実務家の皆さんはともかく、税理士にとって、原価計算は一般的になじみや関心が薄いように思われる。これは、法人税法上、損金となる売上原価等の額の算定が期末棚卸資産の評価による期末残高法(間接法)によるという建付けとされていることから、税務調査でも期末棚卸資産の評価関係を除けば、原価計算の内容そのものを問題とすることは少ないことが影響しているのかもしれない。しかしながら、税務においても原価計算には様々な論点が存在し、税務調査で期末棚卸資産の評価に関連して取り上げられた場合に、的確に対応するためにこれらに関する実務を理解しておくことは、実務家や税理士として必須であると筆者は考えている。は じ め に はじめに—1

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