原価計算の税務
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第二部 税務会計 法人税の原価計算棚卸資産の実際原価会計上の原価原価差額(原価差損)棚卸資産の実際原価会計上の原価貸方原価差額(原価差益)【図2】原価事務の迅速化のため予定価格による計算が含まれていることもあり、各原価要素において、各種差異が発生することは避けられず、法人税法が規定する実際原価との間に差額が生じることになる(標準原価を採用する標準原価計算でも実際原価との間に同様の差異が生じる)。この場合に、本章冒頭で述べたとおり、法人が各事業年度において製造等をした棚卸資産につき算定した取得価額が、法人税法に規定する取得価額に満たない場合におけるその差額が「原価差額」である(基通5-3-1)。したがって、次の図1を「原価差額」といい、図2の場合は「貸方原価差額」という。【図1】この法人税基本通達における原価差額とは、法人の「基準」等に基づく原価計算により算定した製造原価と法人税法に基づく製造原価との差額であるから、会計上の原価差異として計算される金額だけではなく、法人税法上製造原価とすべき費用で原価外処理をされたものも原価差額に含まれる。また、通常の原価差額とは性格を異にする「内部振替差額(例えば、仕掛品等を他部門または他工程へ払い出すときに、予定原価や工場ごとに独立採算制をとる必要からその原価に利益を加えて振替えをする場合の実際原価との差額等)」も「原価差額」に含まれる(基通5-3-2)。つまり、法人税基本通達にいう原価差額とは、原価差額および原価差益(例えば上記カッコ書の「内部振替」差額)を構成するもの全体の差額であって、その差額が借方残高となっている場合をいう。この場合、以下の原価差額としての取扱いがされるのは、「基準」を含めた企業会計の製造原価計算に則って計算されることが前提となるから、第三章 原価差額 — 67

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